長澤秀行JIAA常務理事

新聞社が持つべきネットへの意識…JIAA(前編)

 大手広告会社で新聞広告営業を長らく担当された長澤秀行さんは、ネット草創期に各新聞社のネットニュース事業の立ち上げにかかわってこられた方です。ヨミウリ・オンラインや発言小町などのスタート時期には、読売新聞もお世話になりました。国内外のネット事情にくわしく、現在はJIAA(日本インタラクティブ広告協会)常務理事事務局長としてインターネットの健全化に心血を注いでいます。その視点から、ネット産業だけでなく、新聞社に対しても厳しくも温かいアドバイスをしています。

読売新聞東京本社(東京都千代田区)で

聞き手・読売新聞メディア局編集部長 原田康久

ネットへの読者のシフトにどう対応?

  • 対談する長澤さん(左)と原田部長
    対談する長澤さん(左)と原田部長

――新聞社や出版社が集まったイベントでの長澤さんの発言が印象的でした。新聞社がキュレーションサイトやポータルサイトに無自覚に記事を配信するのは、「編集権を相手にゆだねているということだ」と指摘されました。その意味も含めて、今回はじっくりお話を伺いたいと思います。

 アグリゲーションポータル、キュレーションメディアなどとも言いますが、JIAAの立場で言うと、彼らは私たちの組織の会員です。もちろん、読売新聞を含めた新聞社や雑誌も会員です。だから、どちらかの肩を持つ発言は、本来できないんです。ですが、きょうはJIAA常務理事というよりも、拙著「メディアの苦悩」(光文社新書)の編著者として、そして新聞の一読者として、思うところをお話ししたいと思います。

――わかりました。では、アグリゲーションポータルやキュレーションメディアが登場して、新聞社や出版社がそこに記事を配信しているという状況をどのように見ていますか?

 新聞の読者であっても、今後はネットを通じてニュースを見る人が、だんだん上の世代に上がってくると思います。紙からネットへと読者のシフトが進み、デジタルリテラシーもシニア層に浸透してくると思うんです。急ぎ検討すべきは、その時にどう対応するかという問題です。部数競争や視聴率競争ではなくなる可能性がある。その時に、自社サイトの中だけでやっていけるか、ということでしょう。実態としてはかなり厳しいでしょうね。

 読者を紙の新聞で囲い込めている段階ではやっていけるが、それが不透明になってきた。米国ではもっと顕著に表れ始めています。その時にネットでも読者を囲い込むのはなかなか難しいだろうと思います。そうすると、やっぱり分散型メディアに移行していかなければならない。メディアのいるところに人に来てもらうのではなく、メディアが人のいるところに出ていって、自らのニュースや主張を発信するというやり方です。

――読者を呼び込む力が弱くなってきたから、読者のいそうな所へ出ていくべきということですか?

 そうです。まずは出て行って、お客さんを自分のサイトに連れて帰ってもいいし、相手先で記事を読んでもらって、ブランドを維持してもよい。スマートニュースのチャンネルプラス(※)というのはそのやり方の一つなのかなとは思います。

 僕はヤフーにチャンネルプラスをやるべきだと言っているんです。他のメディアからの記事をピックアップしているのであれば、記事の価値をきっちり見定めて、それに相応した対価を新聞社や出版社等にフィードバックをしていかないといけません。SNSがこれだけ発達してくると、ヤフーニュースといえども相対化されてしまう。絶対の存在ではなくなるんです。キュレーションメディアはどんどん出てきますからね。

 だからこそ、コンテンツとそれを作るメディアを大切にしていくのであれば、それぞれのメディア別のチャンネルも作るべきではないかと話しているんです。そのチャネルの編成権は、新聞社等に任せるべきだろうと思います。

※チャンネルプラス=スマートニュースの記事は、「政治」「エンタメ」「経済」などジャンルごとにまとめられている。ユーザーは多数あるジャンルから自分の好みのジャンルを選んで、トップページのタブに追加できる仕組み。ジャンルの中には「読売新聞」「朝日新聞」といったジャンルもあり、それぞれのジャンルの中は、その新聞社が提供した記事だけが読める。