インフォバーン

ネットの草創期を知る者として…インフォバーン(前編)

 企業のデジタルブランディング戦略をサポートする「インフォバーン」と、Webメディアを多数運営する「メディアジーン」というふたつの会社を設立し、その代表取締役CEOとして活躍している今田 素子 ( もとこ ) さんは、Webメディア業界の先駆者です。パブリッシャーの立場が弱くなってしまった現状を憂い、「このままでは、みんなが読みたい記事をだれも取材できなくなる」という強い危機感をお持ちです。インタビューでは、業界を先導してきた者としての複雑な思いもお聞きすることができました。

株式会社インフォバーン(東京都渋谷区)で
聞き手・読売新聞メディア局編集部長 原田康久

インターネットが変えたもの

  • ネットの草創期からWeb業界に携わる
    ネットの草創期からWeb業界に携わる

――今田さんは新聞社や出版社などのパブリッシャーがデジタル時代に収入を得て、持続可能なビジネスにしていくには、どのように行動するべきかという問題意識を強くお持ちです。しかし、その一番大事なパブリッシャーのマネタイズという部分が、まさに曲がり角に来ています。この難しい時代を僕たちはいかに乗り越えていくべきか、そんな話ができればと思います。

 インターネットの出現前と後で、情報の流れ方が全く変わってしまいました。ソーシャルメディアが登場する前か後か、もうちょっと前で言うと、ブログの前かブログの後かでも、すごく大きな変化があった。最近で言うと、スマホの前か後かで、すごく変わってしまったと思います。でも、もともとのインターネットカルチャーって何だったのかと思い起こすと、情報が自由になったことだと思うんですね。ブログの登場によって、書いた記事がシェアされるとか、いろいろな人によって拡散されていくことはすごくいいことです。かつての情報の流れ方は、送り手のパブリッシャーと受け手の読者という、ほぼ一方通行の関係でした。それが今や、あらゆる方向に記事が拡散されて、情報を届ける人たちがすごく増えた、プレーヤーが増えたというのは、「情報が自由になった」という意味ではいいことだと思います。

 ところが、(そうした拡散性が)拡大解釈されて、盗用も拡散の一種なんじゃないかと考える人が出てきたり、それをビジネスユースにしたりする人が現れた。それに加えて、フェイクニュースの問題も出てきました。つまり、リテラシーが強く問われる時代になってきたんだと思います。もちろん、新聞やテレビに接する時も、読者や視聴者にリテラシーが必要でしょう。でもそこは、新聞社やテレビ局、出版社がちゃんとした倫理規定をもっていて、ちゃんとした情報しか出さないという前提があったと思うんです。書けること、書けないことの線引きといったことが基本的には守られていました。でも、情報が自由になることによって、それが守られなくなってしまいました。そうしたネットの悪い面が、この数年ですごく出ちゃったなと思います。

――今まではプロフェッショナルである情報の送り手が、情報の価値を担保してきたということですね。

 ただ、そもそものインターネットカルチャーというのは、もっとすごく、何というか、ネットの明るい面だけを見ていたと思うんですね、最初のころは。ところが20年もたって成熟していく中で、確信犯で悪いことをする人や、悪気がなくとも間違ったことをする人が出てきてしまった。その間にもいろいろありましたが、そういうのが一気に噴出したのが、この2年ぐらいかなあと。フェイクニュースとか、盗用の事件とかあるんですけど、そういうことなのかなと思います。

 ただ、今のように自由に解放された情報の流れ方が、再び不自由な時代に戻ることはたぶんないので、今の状況の中で自浄作用を発揮して業界を良くしていきつつ、いかにマネタイズしていくかという両方の側面を考えないといけません。