インフォバーン

ネットの草創期を知る者として…インフォバーン(前編)

1994年に「これからはデジタルの時代」

  • 「すべてがデジタル化されて、情報流通が自由になっていく予感がした」
    「すべてがデジタル化されて、情報流通が自由になっていく予感がした」

――今田さんはもともとご両親が出版社を経営されていたのですよね。ご両親の事業を引き継ぐ形で出版業界に入ったのでしょうか?

 親の会社に入っただけです。だから、家業を継いだわけではありません。そして親の会社が倒産して、自分で立ち上げたのが今の会社なので、親からは資産も含めて何も継承していないんです。ただ、古い出版業界というものを知っているという部分では、(親から受け継いだものが)あるかもしれません。経験はすごく積ませてもらいました。出版業界のしくみとかはよくわかっていました。

――その一方で、かなり早い段階から「これからデジタルの時代が来る」と見越していたわけですか。

 前の会社でワイアード(※)の日本版を始めたときに、ものすごい勢いで業界が変わっていくのを目の当たりにしたんですよ。アメリカがすごい勢いで変わっていく、と。だから、たぶんすべての情報はこれからデジタルに置き換わっていくし、テキストも動画も全部デジタライズされて、紙は残るかもしれないけれど、すべてがデジタル化されて、(情報流通が)自由になっていく。そういう流れを感じていました。

※ワイアード=1993年に米国で創刊した雑誌で、主にテクノロジーやカルチャー、ビジネス系の記事を掲載している。その後、英国、イタリア、ドイツ、日本でもそれぞれの国向けに編集、出版されている。Webサイト、デジタル版でも展開している。

  • 紙の出版物を出しながらも、デジタルに近いところにいた(写真はイメージ)
    紙の出版物を出しながらも、デジタルに近いところにいた(写真はイメージ)

――なるほど。

 当時の会社は、海外の出版物を日本でライセンスする、(権利を)買って出版するという仕事に携わっていたんです。例えば、世界で初めてCD-ROMで出版された「ドーリング・キンダースリー」(※)の図鑑といったものも買い付けて、日本に持ってきたりしていました。ですので、紙の出版物をすごく出しながらもデジタルに近いところにいたんですね。

※ドーリング・キンダースリー=絵本や図鑑などを刊行するイギリスの出版社。1990年にCD-ROMとビデオが付属した図鑑を出版した。

――つまり、情報は紙に印刷するだけではなく、そういうふうに中身が置き換わっていくだろうなという感覚があったのですね。それは、ネットが普及し始める前の話ですか?

 ワイアードを出したのが1994年です。日本で本格的にネットの商用接続が始まったころですね。ですから、出版していたのは紙の印刷物ですが、記載していた記事は「全部がデジタルに置き換わっていく」といった内容でした。そして、そのことが実際にアメリカでどのように社会やビジネスを変えていったかということを書いていたので、自然に「これからはデジタルに変わっていくんだな」と実感していました。

デジタルでいかに収益を上げるか

  • 「情報はデジタルになっていくという感覚があった?」
    「情報はデジタルになっていくという感覚があった?」

――自分が関わっているビジネスモデルは紙がベースだったけれど、伝えている内容はデジタルの話だったというのが、面白いですね。

 はい。ただ、そうは言っても、ワイアード自体はフルデジタルで作って出版していましたし、テキストデータや写真データをそのまま海外とのやりとりで使うこともしていました。今までの、版下を切って、貼って、印刷して……みたいな作業は変わっていくなという予感はありましたし、インターネットの登場で情報の流れ方もいずれどんどん変わるだろうと思っていました。

 98年には今の会社(インフォバーン)を立ち上げて、それでも紙の雑誌は出していましたが、そこからずっとデジタルでマネタイズということを何度もトライ&エラーでやってきたんです。最初はほとんど全部、失敗でしたね。「どうやってデジタルでマネタイズすればいいんだろう」と途方に暮れるばかりで、2004年まで(マネタイズする方法を)見つけられませんでした。

 要は紙からデジタルにしていくことによって、(紙の)質量がなくなる。そんなものにお金を払う人っているんだろうかという疑問があったんです。結局は、「インターネットはBtoBでしかビジネスが成立しないのではないか」という疑問と、「それをどうやったらBtoCにもっていけるか」というトライ&エラーだったんですね。

――BtoBのビジネスモデルはインフォバーンだったということですか?

 そうですね。もともとはインフォバーンだったんです。そして、ようやく「ギズモード・ジャパン」(※)をやることによって、なんとなく、マネタイズできる方法が見えてきました。それがバナー広告やスポンサードポストみたいな、要は広告モデルです。06年ごろからですね。

※ギズモード・ジャパン=メディアジーンが運営するテクノロジー情報サイト