ダイヤモンド社

雑誌とWeb、二刀流の編集長…ダイヤモンド社(前編)

データを営業に生かす

  • 読者データを何に生かすか(イメージ)
    読者データを何に生かすか(イメージ)

――データを使って、何をやるんですか?

 すでに今でも、良質な会員データがあることが、タイアップ広告やリードジェネレーション(見込み客の獲得)に効いていますし、クライアント企業とのコラボレーションサイトなどを展開する時の営業でも生きています。「うちは良いお客さんが集まる良いサイトです」というのが、会員データで証明できるのは大きいですね。

――属性はかなり取っていますか?

 結構取っていますね。勤務先や役職、住所や年収まで聞いています。データとして、それがどれだけ必要なのかは分かりませんけれど。それに、(質問が)会員登録のハードルになることもありますしね。会員数を増やしたいなら、質問項目を緩めてもいいんじゃないかという議論もあります。

――そこは難しいところで、間口を広くしたいならデータはなるべく取らない方が良いし、データをビジネスに生かしたいなら、年収や家族構成などいろいろ聞いておいた方が使い勝手は良い。永遠の課題ですよね。

 どういうデータを取るかも難しいですが、どういう記事を開放して、どの記事に鍵をかけるかを見極めることも大事ですよね。ユーザーが読みたくなる記事に鍵をかけたら、登録を促す効果はあると思います。例えば下世話な話題に鍵をかけたら、多くの人が登録してくれるかもしれません。しかし、そういうフィルターで読者を集めて、それをダイヤモンド社のお客さんとして蓄積することに意味があるのか、ということです。

 ですから、今は週刊ダイヤモンドの記事の中でも、担当の署名があるニュース記事だとか、企業の財務分析の記事だとか、著者で言えば野口悠紀雄先生(※)とか、かなりハードコアなビジネス・経済の記事にしか鍵をかけていません。そういう記事を、個人情報を晒してでも読みたいという人を集めたデータには価値があると思います。

(※)野口悠紀雄=経済学者、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論、ファイナンス理論。「超」整理法シリーズの著者としても知られ、ダイヤモンド社からも関連書籍が多数出版されている。

デジタル展開は早かったけれど

  • デジタル展開は早かった(イメージ)
    デジタル展開は早かった(イメージ)

――そうやって集めた顧客データは価値が高いですし、いろいろなビジネスにもおそらく使えるであろうということですよね。そこまで踏み出されたわけですが、出版業界の中ではWeb展開やデジタル展開はむしろ遅かったのではないですか?

 登録会員システム自体は、当初からあったものです。昨年4月の体制改革で、それまで違うフロアにあったデジタルマーケティング室と編集部が合体し、広告部門も含めてデータマーケティングの面などでもっと深く連携しようということになったんです。それが、この1年のことですね。

――それまでは、デジタル事業に対して距離を保っていたのか、何をすべきか静かに検討していたのか、あるいは会社としてデジタル事業に興味を持たなかったのか、どういう感じでした?

 いや、どちらかというと、お調子者というか、先取の気質がある会社なので、新しいことに取り掛かるのは遅くないんです。電子書籍をはじめ、コンテンツのデジタル化に関しては、取り組みはむしろ早いほうでした。ダイヤモンド・オンラインのサービス開始は2007年で、東洋経済オンラインがサイトリニューアルして本格展開し始めた12年11月までは、ビジネス系オンラインメディアではPVではダントツだったんですよ。それが、あれよあれよという間に、東洋経済オンラインのPVがぐーんと伸びてきて、13年の夏頃かな、あっという間に抜かれてしまったという感じですね。